アメリカのほほん手帖

アメリカ東海岸在住16年、暮らしの諸々について綴ります

言葉の力:アメリカ流コミュニケーション

様々な人種・民族・宗教を背景とする人々が共存するアメリカ社会。育つ環境も、考え方も様々であるから、自分の考えていることは口に出して相手に伝えないと、他人には、まずはわかってもらえないというのが普通である。”言葉にしなくても、察してもらえる”ということは、まずない。

そのような社会背景があるせいか、アメリカ人は一般的に見ず知らずの人とも良く会話する(これまで14年間アメリカで暮らしてきた感想)。スーパーやいろんなお店のレジでも、挨拶から始まり、今日の調子はどう?みたいな会話を交わすことが多い。多数の人達が行き交う大きな空間、例えば、ショッピングモールや空港だと、只単に黙ってすれ違ったりするが、出会う人数も空間もある程度限られた場所で行き交った人達とは、何らかのコミュニケーションをとるケースが多いようだ。例えば、勤務先の事務所の入っているオフィスビルのエレベーター内でたまたま一緒になった見ず知らずの人とお天気の話をしたり、ウォーキング中にすれ違う人達とも”Hi!"と言い合うか、少なくとも目と目を合わせてにこっと微笑む等である。

そんな、アメリカ流コミュニケーションで、最近、粋な表現だなあと思ったものがある。ある日、勤務が終わってオフィスビルの外に出たら、雨が降りだしていた。一緒にいた同僚と、”あー雨だ。傘がないから、濡れちゃうね。”みたいな話をして歩いていたら、私達の後にビルから出てきた男性(知らない人)が、私達の会話に入ってきて、空を見上げながら、うれしそうに”Liquid Sunshine !!(水の日差し!)”と雨のことを表現した。その一言で、そこにいた全員微笑んで、気分がぱっと明るくなったのだが、言葉の力は面白い。たった一言で、いやな気分を払拭である。

 別の場面。とある木曜日に職場の休憩室で同僚と”週末までまだ後2日あるね~。”という話をしていたら、そこにやってきた別の同僚が、”We call a Thursday, 'a Friday Jr'." と、木曜日のことをみんなが待ちわびる金曜の一歩手前ってことで、金曜ジュニアと呼んでいると表現した。ここでまた、その場の雰囲気がなごむのである。小さい頃から、様々な場面で、背景もいろいろな他人とのコミュニケーションや自己表現を繰り返してきたアメリカ人の何気ない一言、結構流石!と思う表現も多い。ちょっと気の利いた一言を発することで、その場の緊張をといてしまうような感じである。

そういえば、アメリカでは金曜日のことをTGIF (Thank God It's Fridayの頭文字)と言って、週末前のウキウキ感を表現するが、ある日アメリカ人の同僚から、日本語ではTGIFのことを何と言うのかと尋ねられ、(今は日本では死語となっているかもしれないが、その昔流行っていた)”花金”ととりあえず教えたら、職場で金曜日にすれ違う度に、”Hanakin!!"を連発するようになった。きっとそれも、ちょっと毛色の違う日本人同僚(私)とのコミュニケーション円滑法なのであろう。”Hanakin"という言葉、アメリカの片隅で今も健在である!(^^)!